RAG とナレッジグラフ AI: 基本を理解する(パート1)
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Walid Shehata
AI Product Builder
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はじめに
大規模言語モデル(LLM)は非常に強力ですが、すべてを知っているわけではありません。最新の情報に自動的にアクセスできるわけでもなければ、企業の内部データや特定ドメインの知識を深く理解しているわけでもありません。
このギャップこそが、Retrieval-Augmented Generation(RAG)が登場した理由です。
RAG は、質問に答える瞬間に外部情報を取り込む手段を LLM に与えます。モデルが学習時に得た知識だけに依存するのではなく(それは古かったり不完全だったりする可能性があります)、RAG システムは関連する文書、データ、記録を取得し、そのコンテキストをモデルのプロンプトに注入します。その結果、実際の最新データに基づいた回答を生成できるようになります。
しかし、ここには一つ問題があります。
従来の RAG は、知識を非構造化テキストの断片として扱います。そのため、関連する文章を見つけることには優れていますが、関係性を理解したり、複数の情報源をまたいで推論したり、一貫性を保証したりすることは得意ではありません。
ここで、ナレッジグラフを活用した AI が状況を大きく変えます。エンティティと関係性からなる構造化ネットワークを導入することで、ナレッジグラフは単に事実を提供するだけでなく、それらの事実がどのように結びついているかの“地図”を提供します。
この投稿では、RAG とは何か、どこに限界があるのか、そしてナレッジグラフがどのように検索を推論へと拡張するのかを解説します。
Retrieval-Augmented Generation(RAG)とは何か?
その本質はとてもシンプルです。
RAG = LLM + 検索
LLM に記憶から回答させるのではなく、RAG はモデルが情報を「調べる」ことを可能にします。
ユーザーが質問すると、システムはナレッジソース(文書、データベース、社内Wiki、製品ドキュメント、研究論文など)を検索し、最も関連性の高い情報をモデルに渡します。LLM はその取得されたコンテキストを利用して回答を生成します。
RAGの仕組み(内部動作)
典型的なRAGパイプラインは、次のような流れになります。
1) ナレッジベースのインデックス化
文書は小さなチャンク(断片)に分割されます。各チャンクは、その意味を表す数値ベクトル(エンベディング)に変換され、高速検索のためにベクトルデータベースに保存されます。
2) クエリのエンコード
ユーザーが質問すると、そのクエリも同じエンベディング形式に変換されます。
3) 検索(Retrieval)
システムは、クエリと意味的に類似したチャンクを見つけます。つまり、最も関連性の高い情報を探し出します。
4) コンテキスト付き生成
取得されたチャンクが LLM のプロンプトに追加されます。その事実情報をもとに、モデルが回答を生成します。
なぜ RAG が重要なのか
現在、多くの AI アシスタントは RAG によって支えられています。たとえば、チャットボットが最新の研究論文を要約したり、社内ポリシーについて質問に答えたりできるのは、LLM が学習時にそのデータを見ていなくても、RAG によって必要な情報を取得できるからです。
これは、静的なモデルからの大きな進歩です。
しかし、それで終わりではありません。
従来型 RAG の限界:
従来のRAGシステムは、知識を独立したテキスト断片として扱います。
これは次のような単純な質問にはうまく機能します。
「Company X はいつ設立されたのか?」
しかし、より複雑なクエリになると問題が生じます。たとえば、
「Q1 の売上と Q1 のマーケティング支出を比較し、相関関係を特定せよ」
このような場合、モデルは複数の文書にまたがる事実を結び付ける必要がありますが、RAG はそれらの情報がどのように関連しているかを理解する助けにはなりません。
従来型 RAG における主な課題
1) 関係性の理解が組み込まれていない
RAGは関連する文章を取得しますが、事実同士がどのようにつながっているかを理解しません。たとえば、「Elon Musk」と「Tesla」に関する文章を別々に取得しても、それらの関係を理解しているわけではありません。
2) 推論能力が限定的
取得したチャンクをつなぎ合わせて意味を構築する責任は LLM 側にあります。多段階の推論や論理的一貫性を支える構造化された仕組みは存在しません。
3) 意味的類似性 ≠ 意味のある関係
ベクトル検索はトピックとしての関連性を見つけますが、関係性の知識は理解しません。二つの文章が似ていることは分かっても、あるエンティティが別のエンティティを所有しているとか、ある出来事が別の出来事を引き起こしたといった関係は理解できません。
要するに、RAG は情報を注入することには優れていますが、その情報を理解し推論することには弱いのです。
ナレッジグラフとは何か(そして検索と推論をどう強化するのか)?
ナレッジグラフは、知識を構造化して表現する仕組みです。情報をテキストとして保存するのではなく、エンティティと関係性として保存します。
ネットワークのようなものと考えると分かりやすいでしょう。
- ノード(Nodes) = エンティティ(人物、企業、製品、概念など)
- エッジ(Edges) = 関係(CEO of、owns、treats、located in など)
例えば次のような形です。
Elon Musk → CEO of → Tesla
この構造により、知識は機械が「移動しながら探索し、問い合わせ、推論できる」形になります。
なぜナレッジグラフは強力なのか
1) つながった意味的知識
文書や表とは異なり、グラフは関係性を明示的に表現します。つまり、システムは単なる事実ではなく、それらの事実がどのように関連しているかを理解できます。
これにより、次のようなマルチホップクエリが可能になります。
- 「Brand X を所有する会社を率いているのは誰か?」
- 「Gene Y と関連する疾患を治療する薬はどれか?」
システムは関係性を一歩ずつたどりながらグラフを探索できます。これは非構造化テキストでは直接的にはできないことです。
2) 曖昧性解消とコンテキストの内蔵
例えば「Jaguar」という単語を考えてみましょう。
テキスト検索では、動物と自動車の両方の結果が返る可能性があります。
しかしナレッジグラフでは、それぞれが異なるエンティティとして扱われ、異なる関係を持ちます。
- Jaguar(動物)→ 種、生息地、分類
- Jaguar(車) → 自動車メーカー、モデル、製造工場
そのため、質問が車に関するものであれば、システムはどのJaguarを指しているのかを自動的に理解できます。
3) 一貫性と完全性
関係性が明示的に保存されているため、ナレッジグラフは一貫性を保つことができます。
もしグラフが次のことを知っていれば:
- Product X → consists of → Part A
- Product X → consists of → Part B
Product X の構成要素についてのクエリは、必ず両方のパーツを返します。
ハルシネーションもなく、情報の欠落もありません。
RAG から Graph-RAG へ:検索と推論の融合
ナレッジグラフをAIパイプラインに統合することで、私たちは「テキストの検索」から「構造化された知識の検索」へと進みます。
このアプローチは、しばしば knowledge-augmented generation や Graph-RAG と呼ばれ、AI に次の能力を与えます。
- 関連する事実をまとめて取得する
- エンティティ間の関係を理解する
- 多段階の推論を行う
- より一貫性があり正確な回答を提供する
言い換えれば、AIを単なる検索から「理解」へと進化させるのです。
今後の展望
Part 2 では、Graph-RAG のアーキテクチャが実際にどのように動作するのか、RAG とナレッジグラフをどのような場面で使い分けるべきか(あるいは組み合わせるべきか)、そしてそれがエンタープライズ AI システムにどのような意味を持つのかについて詳しく解説します。
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